かわいい建物や少し変わったマンホール、いつもきれいな花が咲いている植木鉢...、小さなお気に入りを見つけながら自分なりの偏愛マップをつくっていくと、見慣れた街はもちろん見ず知らずの街も自分仕様にカスタマイズされていきます。そしてそれは日々の暮らしや自分自身を愛するための入り口。
2025年10月、ハンズ創業50周年を目前に控え、ハンズ渋谷店を舞台に始動した「生活編集図鑑」プロジェクト。その中のコンテンツのひとつが、今回の「ハンズさんぽ」。
五感を使って街を歩きながら、生活を豊かに編集するための種を持ち帰る。そんな場を目指し、「防災」「マンホール」「平成レトロ」など街を楽しく豊かに読み解くゲストをガイドに、渋谷の街を歩きました。
聞き手に「銭湯図解」で知られる画家の塩谷歩波さん。筆者である路上園芸鑑賞家・ライターの村田あやこは、イベントの進行役を務めました。
新たな目線を取り入れると、街はどんなふうに見えてくるのだろう。期待に胸を膨らませながら、「ハンズさんぽ」スタートです。
暮らしを楽しみ、日常を広げ"ながら"備える。ハンズさんぽ「防災」編
地震や台風など、たびたび災害に見舞われる日本。いざというときに街なかにいたら、どうする──。
「私たちCAMMOCは、暮らしを楽しみながら防災に向き合う『ながら防災』の視点をお伝えしています。今日はみなさんといっしょに、心の中に『防災レンズ』をかけて街を歩きます。どんな装備が必要で、どんなところに自分たちを守るヒントがあるのか。おすすめアイテムもたっぷりお伝えしますよ、宝探しの気持ちで歩いてみましょう!」
ハンズさんぽ「防災」編は、そんな三沢真実さんのあいさつからはじまりました。
おや、「装備」や「宝探し」ってなんだかRPGみたい。防災って、もっと気楽に構えていいものなのかも...?

CAMMOC(左:三沢真実さん・右:内舘綾子さん)
「キャンプのある暮らし」をテーマに、自然とつながりながら、自分らしくしなやかに生きる知恵を提案するユニット。"暮らしの延長線上にある備え=ながら防災"を広める活動を展開中。
地図から読み解く防災のヒント

まずは今いる場所の地形を読み解くこと。まち歩きは「ハザードマップ」の話から始まりました。
三沢:ハザードマップとは、災害時にどんな被害が想定されるか地図上でわかりやすく示したもの。
私たちがいま立っている渋谷の宇田川町は、浸水が想定される地域です。
塩谷:地名からすると、この下には川が流れてるってことなんでしょうか。
三沢:さすが! 昔ここには川が流れていました。渋谷という地名にも「谷」が入ってますよね。
水に関する地名の場所は、浸水や土砂崩れのおそれがあることが多いんです。
ほかにも「蛇」や「さんずい」が入った地名など街の名前には大きなヒントが隠れているんですよ。
街なかのアートが避難場所を示す
ハンズ渋谷店近くの建物の前で、三沢さんが足を止めます。
三沢:みなさん、建物の上を見てください。
塩谷:これは、アート...? 大きな矢印のように見えますね。

三沢:そう、この矢印は一時避難場所を指しているんです。「渋谷アロープロジェクト」といって、日本語がわからない方たちにも一時避難場所をわかりやすく伝えられるよう、アートとして表現してるんですよ。
内舘:ちなみに「避難所」は長期滞在する場所、「避難場所」は一時的に滞在する場所という違いがあります。
街なかのデザインにも身を守るヒントはたくさん潜んでいます。矢印を見上げる参加者からは「知らなかった!」と驚きの声が上がりました。
防災目線で街の風景を読み解く
今度は、建物が密集する小道を歩きます。
三沢:外にいるときに震度5の地震が起こったと想定してみてください。
狭い道は情緒があってすてきですが、見通しが悪く人が集中してしまうリスクがあります。
建物の上からものが落ちてきてしまう危険性も。
こういうとき、ヘルメットタイプの帽子や、私がいま身につけているような帽子に入れるタイプのプロテクターがあると頭を守ることができます。

塩谷:自分の目で見て、最悪の事態を想定しながら歩くことが大事ですね。
三沢:工事をしている場所では、災害があったときに仮囲いが倒れてしまったり上からものが落ちてくる危険性があります。でも、工事中の情報はハザードマップには載っていないので、定期的に歩いて最新状況を把握しておくことも大事ですね。
内舘:どの方向に逃げるかが生死を分けることも。「こっちのほうが道が広くて身を守れそうだ」と体感しながら歩くことも意識しましょう!

防災ポーチで楽しく備える
しばらく歩いていくと、代々木公園にたどり着きました。
三沢:代々木公園は、区民以外にも開かれた避難場所。災害時には物資の集積所になります。
またあまり知られていないのですが、実は公園内には太陽光パネルや蓄電池がいろいろな場所に備えられています。

一見すると普通の街灯でも、上面には太陽光パネルがついている
内舘:災害時にかまどとして使える「かまどベンチ」なんてものもあるんですよ。みなさんも近所の公園にどんな備えがあるか、ぜひチェックしてみてください。
ここで休憩タイム。おやつとして、持ち運びに便利な防災食品をCAMMOCさんが用意してくれていました。
休憩の合間に、おふたりがふだん持ち歩いている「防災ポーチ」の中身を紹介してくださいます。

内舘:ポーチ自体は、多くのアウトドアメーカーさんが出しているような、コンパクトなショルダーバッグやサコッシュ。ライトやペン、ハサミ、ナイフなどがついたエマージェンシーツールとホイッスルをポーチの外側につけています。ポーチの中にはチャック付きビニール袋に、薬類やお金、携帯用トイレや靴下、ショーツなどを整理して持ち歩いています。
三沢:銭湯や1〜2泊の旅行でも、防災ポーチは役立ちますよ。
塩谷:ふだんのお出かけでも役立つアイテムばかり。日常の延長線上に防災があるんですね。
「防災レンズ」をかけたらハンズは宝箱
災害を怖がるのではなく、「防災レンズ」をかけてどう乗り切るかゲーム感覚で考える。CAMMOCのおふたりの目線を借りて街を歩いてみると、どんなことに気をつけ、なにを備えておけばいいか、よりリアルに想像することができ、前向きな気持ちになれました。
塩谷:少し意識を変えるだけで、今まで気づかなかったものが見えてきました。「いざというときのために」と肩肘張るのではなく、お出かけ用ポーチの中身をすこし変えてみる、キャンプ道具に防災目線を取り入れてみるなど、ふだんの生活が自然と「もしもの時の備え」になるんだなと思うとハードルが下がります。
内舘:うれしいです! それがまさに私たちが「ながら防災」で考え続けてきたことなんです。
三沢:ハンズさんは、私たちから見れば防災目線で役立つアイテムが揃った宝箱。ぜひ「防災レンズ」をかけて売り場も楽しんでみてください!
あらたな世界につながる魅惑の蓋。ハンズさんぽ「マンホール」編
街なかで視線を落とすと、必ずといっていいほど目に入ってくるマンホール。蓋の下はどうなってるんだろう──小さいころは異世界に通じている入り口のように見えて、ドキドキしたのを覚えています。
続いては、ハンズさんぽ「マンホール」編。マンホールナイト実行委員・白浜公平さんと山田秀人(山ぴぃ)さんの案内で読み解く足もとの世界には、地下のヒミツはもちろん、街の歴史や"推し"までさまざまな魅力が隠されていました。
インフラとこだわり、制約ありきの味わい深さ

マンホールベースには、マンホールに関連するグッズのほか、各地のマンホールのデザインが印刷されたコレクションカード「ワールドマンホールコレクション」も並ぶ
まず一行が向かったのはハンズ渋谷店のB1Aフロアにある「HANDS マンホールベース 渋谷」。山田秀人さんがプロデュースした、デザインマンホールの魅力発信基地です。まずは山田さんと白浜さんから、マンホール蓋の楽しみ方をお話いただきました。

山田秀人(山ぴぃ)さん
ご当地カード「ワールドマンホールコレクション」やイベント「マンホールサミット」を軸にデザインマンホールの魅力を国内外に広げる下水道広報をしている。11年目となる昨年からは、海外の方を含めた幅広い層の方にマンホールの魅力を伝えるべく活動中。
山田:「HANDS マンホールベース 渋谷」は、デザインマンホールの最新情報を発信し、マンホール蓋のことを知らない人が来ても楽しんでもらえるような聖地にしたい! と立ち上げたブースです。
デザインマンホールとは、直径60cmの円の中に、その街の「推し」が描かれているマンホールのこと。ただマンホールというのはあくまで公共物なので、決まりごとが多いんです。線の幅や文字の太さといった多くの制約の中でデザイナーさんたちが手掛ける、制約ありきの美しさも魅力です。
また足もとで踏まれるものにもかかわらず、カラフルな色味は職人さんがひとつずつ手がけたもの。こうしたこだわりやおもてなしの心も、デザインマンホールのすばらしさのひとつですね。

白浜公平さん
マンホールの蓋好きが集まってキャッキャッする魅惑のイベント「マンホールナイト(※)」の主宰者の一人。※著名なゲストを招いてマニアックな研究発表を行ったり、まち歩きや、展示・映像・料理や飲み物を通してマンホールの蓋の魅力と深遠に迫るイベント。
白浜:マンホールは、その名の通り人(マン)が入る穴(ホール)のこと。ひとくちにマンホールといっても、上下水道や電気・ガス・基準点など、いろんな用途があります。さらに同じ用途でも時代によって蓋のデザインは変わります。だからいろんなベクトルで、いかようにも楽しめるんです。
これ何に見える? 犬カピ論争の結末やいかに
ここからは白浜さんの案内で、渋谷の街を歩きます。さっそく、足もとに目を留めた白浜さん。

塩谷:これ、よく見ます!
白浜:東京都下水道局の蓋です。東京都ゆかりのソメイヨシノとイチョウ、カモメがデザインされています。ただ、この蓋をパッと見て「犬」と思う人はけっこう多くて。
塩谷:たしかに、犬に見えます。

白浜:実は僕は「カピバラ」派なんですが(笑)。ただ、以前まち歩きをやったとき、あることに気づいた人がいて...。はじっこの模様、何に見えますか?
塩谷:家の形をしていますね。
白浜:犬小屋、と言われているんです。これにはカピバラ派の僕も一瞬諦めかけたんですけど、井の頭公園のカピバラを見に行ったらまったく同じ形の小屋があったんです! だからまだカピバラ説は捨てきれない。これがマンホール界では有名な「犬カピ論争」です(笑)。
渋谷名物・犬に縁あるマンホール

道玄坂の途中で、白浜さんがあるマンホール蓋を指さしました。
白浜:これは、何がデザインされているかわかりますか?
塩谷:あ、真ん中にローマ字で「道玄坂(DOG・EN・SAKA)」って書いてある。

白浜:実はハチ公にちなんで犬が描かれてるんですよ。しかも首輪をしてる犬と、尻尾を巻いてる犬が一匹ずつ紛れ込んでる。すごいデザインですよね。ちなみに「DOG・EN・SAKA」は、「犬に縁がある坂」っていうシャレが効いてるんです。
塩谷:すごい!

白浜:駅前のハチ公の周りには、ハチ公がデザインされた蓋もあります。銅像だけじゃなく、実は足元にもハチ公がいるっていうのは、あまり知られてないことですよね。
塩谷:下から見上げると、銅像とのツーショットが撮れますね。

白浜:ちなみに僕らは、マンホール蓋の題材になったものに出会えたら「ご本人登場」って呼んでます。
塩谷:ぜひみなさん、「ご本人」と一緒に写真を撮ってみてください(笑)。
歴史を語る、蓋に残された東京「府」の文字
原宿に近づいた遊歩道で、白浜さんが立ち止まりました。
白浜:かつてここには渋谷川の支流が流れ、橋がかかっていました。橋の上にあたる部分に、東京都の前身である「東京府」時代のマンホール蓋が残っています。蓋に書いてあるのは「消火用吸水孔」という文字。

塩谷:右から左に読むんですね。

白浜:蓋には、昭和6年に一般市民から公募して選ばれた、東京府の紋章も載っています。
塩谷:貴重ですね!
マンホール蓋を通して、東京の歴史にも触れることができるとは。参加者からも、「知らなかった! 驚きました」という声が上がりました。
マンホール鑑賞は謎解きゲーム

マンホール蓋をたどりながら歩くと、下水道だけでなく、消火用の吸水孔や地下配線など、地下にはさまざまなインフラが隠れていると気づきました。
塩谷:行きと帰りの目線が一気に変わりました。見えないものが見えてくるのが探偵みたいで、楽しかったです!
白浜:マンホールを見るだけで、その地下にあるインフラの種類や年代が見えてくる。まさに謎解きみたいですよね。その場所の歴史や地形とひも付けて考えるのも楽しいですよ。

イベント当日は、ハチ公のマンホール蓋やハンズ渋谷店のレアカードもお披露目された
山田:「HANDS マンホールベース 渋谷」では、ハチ公のマンホール蓋の「ワールドマンホールコレクション」も販売中です。カードを見ながら実際のマンホール蓋を探索していただくと、さらに楽しめますよ。
村田:コンプリートを目指して各地を旅する人もいそうです。旅行の記念にもぴったりですね。

平成の空気感を街にあふれるタイムカプセルで追体験。ハンズさんぽ「平成レトロ」編
スケルトンにファンシーグッズにギャル文化──あなたは平成にどんな思い出がありますか? 近年、平成カルチャーを新鮮にとらえ直すムーブメントが起きています。
「平成レトロというとキャラクターが注目されがちですが、実は街も建築物もすごくおもしろいんですよ」と話す第一人者の山下メロさんの案内で、平成カルチャーのるつぼ・渋谷を歩くハンズさんぽ「平成レトロ」編。タイムカプセルを開けるように、当時の熱気を追体験していきましょう。
無駄が愛おしい、平成レトロ建築

山下メロさん(記憶の扉のドアボーイ)
平成レトロを提唱し、バブル~平成の庶民風俗やスケルトンを研究。当時の部屋を再現した展示を行い多数メディアで紹介。バブル期の観光みやげ保護活動を日本全国で行う。
山下:意外かもしれませんが、実は平成の建築物ってユニークなものが多い。とくに渋谷には昔の建築物がたくさん残っています。今日は若者文化のメッカだった当時の雰囲気が感じられるホットスポットも巡るので、スマホ越しではわからない平成の空気感を、ぜひ体験してください!
最初に立ち止まったのは、ハンズ近くの渋谷BEAM。

山下:サブカルチャーの発信地・まんだらけの入り口を見てください。退廃的でサイバーパンクな雰囲気のある装飾ですよね。看板に今ではほとんど見ないブラウン管テレビも使われています。贅沢で余裕がある感じがしますね。
塩谷:今の時代、総工費がかかってしまうような装飾の多い建築は、なかなか実現しづらそうですね。
山下:最近は効率化が求められ、無駄なものはあまり好まれないですからね。
こういうふうに一見すると普通のビルに見えるけれど、よくよく見るとおもしろい建築物が、渋谷にはたくさん残っているんです。
「平成の渋谷」を求め聖地巡礼
センター街へと足を踏み入れ、とある雑居ビルの前で立ち止まるメロさん。

山下:ここは1995年に初代プリント倶楽部が出たころからやっている「プリクラのメッカ」です。...えっ! 閉店してる!? ついこのまえ下見のときには営業してたのに。
塩谷:養生テープに「閉店したよ!!またね」って書かれてますね。看板だけでもギリギリ見られた。
山下:いや〜びっくりでしたが、立ち会えてよかったです。...いや、よかったのか?(笑)
塩谷:ある意味、貴重な瞬間でしたね。

山下:気を取り直して、続いてはこちら。映画『ラブ&ポップ』には1990年代の渋谷が登場しますが、当時のセンター街はグラフィティがそこらじゅうに描かれ、チーマーに絡まれたりする危険な場所でした。
そこでイメージアップのために、センター街を「バスケットボールストリート」という呼称に変えようとした時期があったんです。あまり定着しなかったんですが、銘板だけは今も。街なかにはこんなふうに、かつての痕跡がタイムカプセルのように残されているんですね。
山下:あとやっぱり、渋谷で外せないのは109。ビルの形状もおもしろいですが、数々のイベントも行われたファサードが見事ですよね。もともと地下にだけギャルブランドが入ってたんですが、売れ行きがいいのでビル全体に広がっていきました。そのメンズ館だった駅前のMAGNET by SHIBUYA109も、石を使ったおしゃれなエレベーターホールの装飾がいいんですよ。

今も残る90年代グラフィティ
街のあちこちに平成カルチャーのかけらを感じながら、渋谷駅の高架下を通り抜け、宮益坂を脇道に入っていきます。駅周辺の喧騒から離れた場所に、インパクト抜群の建物を発見。

山下:90年代のセンター街を彷彿とさせるグラフィティが、突如現れました。ここだけ時が止まっている感じですよね。
塩谷:かっこいいですね!
山下:渋谷は再開発できれいになりつつありますが、裏に入るといきなりこういうものに出会えるのがいいですね。どっちがいい・悪いかはさておき、平成の空気感を味わえる場所は、意外と残っています。ぜひデートスポットとしていかがですか? 「俺、渋谷のこんなスポット知ってるよ」って(笑)。
塩谷:ハマる人とハマらない人に分かれそうです。
山下:リトマス試験紙として、いいかもしれません。
平成の贅沢な雰囲気を味わう

山下:そしてラストは、いま目の前に見えている、渋谷で一番ヤバい建物です。いわゆるバブル建築といいますか、いまの商業施設では考えられない贅沢なつくりです。
塩谷:構造とは関係ない装飾がいっぱいついていて、魅力的ですね。
山下:正面だけでなく、側面も見応えがあります。四角かったり丸みがかっていたり。おしゃれですね。
塩谷:屋上はどうなってるんだろう、ペントハウスとして住めたら最高ですね。
山下:宇宙船がモチーフなんですかね。アールデコっぽい感じもしますが、上のほうまでかなり凝ったデザイン。よくここまでつくり込んだなと感心します。
塩谷:信じられないくらいお金がかかっていそうですね。
山下:これだけの建物がちゃんと残ってるのは、渋谷ならでは。あるうちに見ておかなきゃなと思い、今日みなさんをお連れしました。

側面から見た屋上。細部まで凝った装飾が施されている
無駄なものが心を癒す
どんどん移り変わっていく渋谷の街のそこかしこに、平成の空気感のかけらが残っていました。
「昔のセンター街は怖くて近づけなかった」「明治通りの喫茶店によく来ていた」「IKEAはもともとHMVで、そこで"渋谷系"って生まれたんですよね」などなど。自然とそれぞれの「平成」にまつわる思い出話も弾みました。
塩谷:建物が好きなので、日ごろから見て歩いていますが、気づいていなかったものが多かったです。専門家の方や偏愛を持った方といっしょに歩くのは、視点をどんどん変えていく力があるなと、あらためて思いました。
山下:今の世の中はとにかく効率を重視する傾向にありますが、無駄なものが人の心を癒やす瞬間は確実にあると思います。ぜひみなさん、自分がすてきだなと思う無駄なものを見つけて、心を豊かにしていただけたらと思います。

おわりに
宝探しに謎解き、タイムカプセルやすてきな無駄に、レンズをかける──「ハンズさんぽ」で登場したキーワードには、街を楽しく読み解くためのヒントがあふれていました。渋谷という誰もが訪れたことのある大都市でも、偏愛レンズをかけて、宝探し気分で歩いてみると、"あるのに見えていなかったもの"が次々と浮かび上がってきます。
「とにかく楽しむことが大事! 自分が好きなことを生活に混ぜ込むだけでも日々の景色って変わるんです 」(内舘綾子さん)
「生活の中で、思い出をかたちとして集めていってほしいです。集まったら、自分だけのアルバムになりますから」(山田秀人さん)
「自分の目で、自分の好きを通じて、街を歩いてみてほしいです。きっと愛おしい無駄が見つかるはず」(山下メロさん)
今回「ハンズさんぽ」をガイドしてくださったみなさんは、生活を編集するためのヒントについて、こんな風に教えてくれました。
レンズを磨いて"発見する目"を養い、付け替えるレンズをいくつも持てば、なにげない風景がたくさんの物語に満ちていく。いつもとは少し違う視点を身につけて、自分が物語の主人公になったような気持ちで街を歩いてみませんか。きっとそれがよりよい暮らしの種を見つけ、生活を豊かに編集するための第一歩となるのです。
【ハンズ渋谷店 生活編集図鑑プロジェクトとは】
2025年10月、ハンズ創業50周年を目前に控え、ハンズ渋谷店を舞台に始動した「生活編集図鑑」プロジェクト。店内を「訪れることで暮らしがアップデートされる図鑑」として位置づけ、そこで得た発見を生活に持ち帰ることで、日常をよりよく編集していく体験を届けよう、という企画です。
「ハンズさんぽ」の聞き手、画家の塩谷歩波さんがハンズの魅力を描き起こした「生活編集図鑑 絵地図」はこちら>>
"好き"こそ暮らしの上手なれ。偏愛で編む「自分だけの図鑑」のつくり方【「ハンズトーク」イベントレポート】の記事はこちら>
